『女人哀愁』
神保町シアター「ニュープリントで蘇る名画たち」
見合い結婚で主婦として幸せの家庭を築きあげられると思ったら、嫁ぎ先の家では義理の父母、小姑から女中並みの扱いでこき使われて、夫は妻をほったらかしの状況にある。
ここで主人公(入江たか子)は、古風に耐える女性としてではなく、世間にどのように見られようが、冷たい家庭に見切りをつけ夫とも別れ自立を決意する。
今でも普遍的につきまとう夫婦と家族との問題であるが、成瀬巳喜男監督は家庭に入ってきた嫁を異物のように扱う姿を辛辣に描き、こんな家庭ならさっさと見切りをつけるに限ると観客の同情を得るストーリーとなっている。
戦前の映画でありながらも、芯の強い女性像を描く女性映画だ。(この時代に女性映画という見分け方があったかは不明だが)
夫と年が離れた弟は、嫁に宿題を見てもらおうとするが、常に嫁が呼びつけられて見てもらえないシーンが、映画的に皮肉な描写で面白い。
S12('37)/PCL、入江ぷろ/白黒/スタンダード/1時間14分
■監督:成瀬巳喜男■脚本:成瀬巳喜男、田中千禾夫■撮影:三浦光雄■音楽:江口夜詩■美術:戸塚正夫
■出演:入江たか子、佐伯秀男、北沢彪、堤真佐子、沢蘭子、大川平八郎
ビデオ・DVD未発売