Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

『動脈列島』

公開当時は東映の『新幹線大爆破』と同時に企画が重なった。
新幹線をゆするサスペンス映画の競作だが、内容的には『新幹線大爆破』の圧勝だった。
『動脈列島』は、脅迫から犯行の実行まで時間をかけ過ぎで犯人の行動がユルすぎる。
一方で犯人は、国鉄総裁の家に忍びこみ直訴するなど権力側もユルいのだ。
この犯人は、「新幹線の騒音がいかにひどいか」を義憤に駆られて行動するのが、ストレートな犯行動機なのだが、共感を得られない。
繁栄の中の格差社会は、『動脈列島』『新幹線大爆破』も隠れたテーマであり、両作品とも当時の国鉄に協力を得られなかった。
そして製作した松竹も東映もどちらも興行はコケた。
戦後から驚異の高度経済成長を遂げた日本のシンボルである新幹線を題材に、エポックな社会派巨編映画を試みた映画界の意欲は買う。
しかし、この頃には観客を熱狂させるエネルギーが映画界になかったのが残念だ。