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『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』 銀座シネパトス

90歳の報道写真家がいることを知った。
福島菊次郎は今も現役の写真家でひとり暮らしである。
この生涯現役の反骨のジャーナリストの足跡と現在を追ったドキュメンタリー映画だ。
24歳で終戦を迎える。広島で招集されたが8月1日に宮崎県に移動しており、原爆を逃れた。
戦後写真家としてデビューのきっかけも広島からだった。
ひとりの被爆者を10年に渡り撮り続け、プロとして認められるが、自らも精神に変調をきたし精神病院に入院したことも告白する。
一番最初に平和都市宣言を行った広島には、ニッポンの嘘が覆ってもはや撮るものがないという。
きれいな都市となった広島は原爆スラム街を壊したうえに成り立って、被爆者の苦しみを隠しているという。
以来、戦後のニッポンの嘘を捉えてシャッターを切り続ける。
原爆、安保、学生運動三里塚闘争、公害、自衛隊原発等をテーマに権力と戦い続ける。
時に妨害にあい、暴漢に襲われたり、家を焼かれたりもするが反骨の精神は揺るがない。
1980年代に、保守化した日本とメディアに決別し、無人島に世捨て人のように暮らしたこともあるが、病気となり入院する。
この時期に天皇の下血報道をきいたことにより、天皇の戦争責任展も開始する。
国家と戦うことを決意してから、年金をもらう事すら拒否する。
そして、3.11の東日本大震災が発生。
福島第一原発の事故を受け、報道写真家・福島菊次郎は、被曝地に入りシャッターを切る。
ヒロシマフクシマとオーバーラップする被写体を通してニッポンの嘘の代償を突きつけられた。
いっしょには暮らしていないが、実の娘さんがインタビューで、父はかっこいいし誇りと思うと語る証言が心を打つ。
福島菊次郎は、実にかっこいいじいさんなのである。

写らなかった戦後 ヒロシマの嘘

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写らなかった戦後〈2〉菊次郎の海 (写らなかった戦後 (2))

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写らなかった戦後3 殺すな、殺されるな 福島菊次郎遺言集

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