『ゴモラ』シアターイメージフォーラム
2008年にカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞し、その年の東京国際映画祭でも上映された作品がようやく陽の目をみた。
『死都ゴモラ』という原作をもとにしたイタリア・ナポリの犯罪組織カモッラを描いた作品である。
溝口敦の『暴力団』を読み終えたばかりなのだが、そこにカモッラのことが触れていた。
イタリアだとマフィアと思い浮かべるが、マフィアはシチリアの移民の犯罪組織を指し、他にもこのカモッラのような犯罪組織がいろいろあるとのことだ。
日本の暴力団との違いは、マフィアもカモッラも決して看板を掲げない闇組織だ。
『ゴッドファーザー』では、組織の勢力争いは激しいが家族愛や組織の絆が描かれていたが、ここではそのような描かれ方がされていない。
犯罪組織に憧れる少年が選択する厳しい選択。
アル・パチーノの『スカーフェイス』を真似して粋がるチンピラ青年二人組の無鉄砲な生き様。
一流の腕を持ちながら薄給にがまんできない仕立て屋が会社に内緒で中国人の組織に製法指導したことによる報い。
組織の帳簿係が組織を寝返ったことによる壮絶な恐怖。
優秀な大卒の青年が就職した高収入の就職先は、あらゆる危険な産業廃棄物を請け負う企業だった。
この5つのエピソードで構成された物語だがどれも非情なビターテイストだ。
現在のイタリアの現実でもあり、ナポリのかってはモダンと思われる古くなった集合住宅街がまさにゴモラという名にふさわしい舞台となっている。
イタリアのネオリアリズム映画の息吹きを感じた。
- 作者: ロベルトサヴィアーノ,大久保昭男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/10/05
- メディア: 文庫
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