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「銀座並木座―日本映画とともに歩んだ四十五年」嵩元友子著を読む。

銀座並木座が閉館したのは1998年9月。この年には9月に黒澤明、11月淀川長治、12月に木下恵介が亡くなっている。
映画館興行を大きく変えたシネコンは、その5年前にワーナー・マイカル・シネマズ海老名が初オープンした。
並木座は、客席数は80席と少なく、いつも混んでおり、坐れたとしても席は狭く窮屈で、都内のミニシアターも充実していたので、閉館は時代の流れともいえた。
この本で知ったこと。
�この劇場のオーナーは映画界の大プロデューサー藤本眞澄であったこと。
�館の発行するウィークリーには錚々たる映画人が表紙絵、エッセイ、随筆など投稿していた。
�一時期、外国映画を上映していたことがある。
戦後の敏腕大プロデューサーの「顔」であるにしても、当時の映画館は数多くあっただろうことに、このミニシアターにかかわった人たちの情熱が伝わる。
執筆者の顔ぶれは凄いし、しかもノーギャラだという。ちょっとした映画遺産である。
監督・脚本家では、小津安二郎五所平之助市川崑成瀬巳喜男今井正川島雄三豊田四郎新藤兼人、野田高梧、松山善三・・・
俳優では、池部良高峰秀子小林桂樹田中絹代山村聡森繁久弥轟夕起子淡島千景・・・
並木座でいろいろ観たのは学生時代で、社会人になってからは遠ざかっていた。
今日のようなDVDや多チャンネル放送で旧作が気軽に観られる時代ではないので、当時は並木座で観たことで映画の知ったかぶりをしたものだった。
なお、並木座の支配人(4代替っている)は、陽の当らない作品の興行を請け負ったり、個人的に自主映画作品に投資したりして、個性的な映画館を先駆けて運営してきた。
シネコン全盛期の今、ミニシアター衰退が言われる中で、興行と映画館運営は映画の真価が問われる問題でもある。
巻末に開館中(1953年10月7日〜1998年9月22日)の全上映作品リストが掲載されている。

銀座並木座―日本映画とともに歩んだ四十五年

銀座並木座―日本映画とともに歩んだ四十五年

銀座並木座ウィークリー

銀座並木座ウィークリー

「秋津温泉」神保町シアター
岡田茉莉子100本記念映画で企画と衣装にも 岡田茉莉子のクレジットがあった。
女優が興行力があった時代だからなのか、松竹だからなのか?
出会ってから17年間ひたすら待つ女、 岡田茉莉子はさすが絶頂期の美しさ輝くヒロイン。
それに対して長門裕之は時とともに堕落というか、平凡なおっさんになっていく。
秋津温泉が異界の世界のように二人の世界をはぐくむ。
撮影の成島東一郎の美しいカメラワークと音楽の林光のくり返し流れる旋律が心に響く。
秋津温泉は岡山県津山市奥津温泉がロケ地とのこと。いつかは行ってみたい。
1962 松竹大船 監督/吉田貴重 原作/藤原審爾 撮影/成島東一郎 音楽/林光 美術/浜田辰雄
出演/岡田茉莉子 長門裕之 日高澄子 宇野重吉 山村聡

秋津温泉 [DVD]

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