Like a bird, like a cat, like a fish?

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「アレクサンドリア」新宿ピカデリー

海を飛ぶ夢」は残念ながら未見だがアレハンドロ・アメナーパル監督の6年振りの作品。
「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」など寡作ではあるが、ヨーロッパの実力派監督であるので期待して観た。
ローマ帝国の末期、4世紀のアレクサンドラ(現エジプトの都市)の繁栄と崩壊を実在した女性天文学者ピュパティアの生涯として描く。
弾圧されていたキリスト教が勢力を持ち、多神教を持つ崇拝する統治者との支配関係が逆転する。
たびたび宇宙からの視点で地上が描写され、時には破壊行為で混乱する都市の中で人間が蟻のようにうごめいているシーンもある。
宗教と宇宙、智の蓄積としての図書館と破壊、人類は皆兄弟であるといいながら奴隷に身の回りを世話してもらっている主人公、信仰と科学、が相似に描かれている。
ピュパティアは天文学の追及から地球は天動説ではなく地動説にあるということの証明の発見に至る。
但し、ピュパティアは殺されたために科学の暗黒時代に入り、地動説の証明は17世紀のケプラー法則の発見まで遅れることとなった。
人間関係は、主人公の科学にかける純真さに昇華され単純化されているが、時代考証などしっかりしており美術セットも見事、見ごたえのある歴史大作になっている。
原題のAGORAとは古代ギリシャ都市国家の中心街にある広場 精神的な中心であるアクロポリスに対して、市民の経済・日常生活の中心を指す言葉とのことである。
2009 スペイン 監督/アレハンドロ・アメナーパル 出演/レイチェル・ワイズ マックス・ミンゲラ オスカー・アイザック