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「洲崎パラダイス 赤信号」「幕末太陽傳」池袋・新文芸座

「撮影監督・高村倉太郎」(ワイズ出版)の出版を記念して「日本映画黄金時代、48人の監督と撮った男」(11/26〜12/9)という上映会だったが、高村倉太郎さんは11月21日に亡くなり、残念ながらタイミングを合わしたような追悼上映会となった。前日は出版記念パーティーも開かれる予定であったが中止になった。
初日の今日は、川島雄三監督特集でトークショーとして南田洋子さんがゲストだった。南田さんは、今回高村さん自ら直接頼まれていっしょに舞台に上がる予定だったのに、突然の訃報に驚き、時に涙ぐみながら高村さんの思い出と当時の撮影の事を語った。
幕末太陽傳」で、あの有名な南田洋子左幸子の掴み合いの喧嘩については、左幸子は体育大出のスポーツウーマンで本気に蹴飛ばされたりしたが、周りは同情してくれた。それを不機嫌にみていた左幸子に対して、高村さんがおだやかになだめていたなどのエピソードを披露した。
「洲崎パラダイス 赤信号」「幕末太陽傳」久しぶりにスクリーンで観たが、川島雄三のまぎれもない傑作である。
「洲崎パラダイス 赤信号」の梅雨時のジメジメした湿度感と雨、水溜りに映るネオンサイン、川面の光の反射など主人公たちのやるせない感情を表現している。行き場のなくなった新珠三千代三橋達也のふたりが橋の上で途方にくれていながら、映画の最初は新珠三千代が駆け出し、ラストも同じ場所で今度は三橋達也が駆け出す。貧しさと未来に対する不安があった昭和30年代初期の空気を映画の中にエンドレスに封じ込めている。
幕末太陽傳」は、これはまず見事な品川の郭のセット。次に絶妙な配役。幕末という時代の変わり目に要領良く生き抜く居残り佐平次。肺病病みのフランキー堺が、時折見せる暗い顔つきがこの作品のトーンに反映している。活気があるのになぜか不安。この作品は、幕末であるのになぜ現在の品川の紹介から始まったのだろうか?
先週は、松竹の「元禄忠臣蔵」で今週も日活の名作二本立てと続いたが、劇場で気になったことは、観客に若者が少ないことだ。昔の名画座は、若者が中心で、名作と言われた作品は立ち見だった。今はDVDやレンタルで気楽に映画が観れるようになったのか、中年以上老人が大半になって観客層が様変わりしたようだ。
かくいう自分も、新文芸座になってからこの劇場に入るのは初めてであった。パチンコ店の上にあるのを知らなかった。