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『007スカイフォール』TOHOシネマズ府中

ネタばれあり!
ダニエル・クレイグ主演3作目のジェームズ・ボンドの活躍はいかなるものか!
大期待のなか、公開2日目に観に行った。
観終わった後の感想は、ひとことで言えば007シリーズのなかで最も異色作だった。
なぜなら、ジェームズ・ボンドの生い立ちに触れている。
タイトルの意味におどろき。
今回登場の悪役(ハビエル・バルデム)のキャラクターもまた異色だ。
世界征服や己の野望に限りを尽くすという今までの悪役と違って、М(ジュディ・ディンチ)に対する復讐のストーカーだ。
Мの危機に、ボンドは母親を守る息子のようだ。
これは意図的な演出の意図であり、Мが育てたMI6のスパイは(ボンドを含めて)怪物に育った。
母に裏切られた息子は、近親憎悪に取り憑かれ、殺しにやって来て「ママ」というセリフまで吐く。
ボンド自身も冒頭にMの非情な判断で死にかかっており、Мを「クソババア」というセリフもあった。
これは親兄弟たちが殺し合う古典的悲劇の様相を呈する訳だ。
パルデムが語るネズミの話が作品のキーになっていた。
このような作品なので全編に重たい雰囲気が漂う。
ロンドンでのテロなどは、もう現実のテロとダブって007の明快なアクションとは違っている。
スーパーヒーローなど現実的に描けない現代において、陰影を濃く人物に深化を与えるのが最近の映画傾向だ。
クリストファー・ノーラン監督のバットマン三部作、特に『ダークナイト』との比較が今後ささやかれるのではないだろうか。

007シリーズ50周年を機に、総決算をして新たなスタートをする決意の表われである。
過去の作品への気配りは、さりげなく描かれていて心憎いほどうまい。
サム・メンデス監督の今回の起用は、ドラマとしては良かったかも知れない。
だか今回は特別篇として終わらせて、再スタートしてもらいたい。
深刻な顔つきのボンドよりも、爽快感のあるボンドの活躍を望むのもファンの心理だと思う。
満を持しての待ち望んだ本作は、禁じ手まで使った感があり、後世にどう評価されるか?
『007カジノ・ロワイヤル』はシリーズ最高傑作であり、それを超えることはなかったというのが私の評価だ。