『青べか物語』神保町シアター
黒澤明信奉者であったから、山本周五郎作品は昔にいろいろ読んでいた。この小説も読んでいてずっと見逃していた作品だった。
千葉県浦安(映画では浦粕となっている)ののどかな漁師町が舞台となっている。
京葉工業地帯が出現する直前の高速道路もこれから伸び始める前、ディズニーランドなんぞが出来るとは思いもしない時代の風景が懐かしい。
江戸の名残りを残す町民の貧しくも、したたかで、エゴイストで、色ごととばくち好きで、人情味があって、滑稽であり、悲しみもある人々。
まさに山本周五郎の世界の住民たちに再会した。
日本映画を支えてきた脇役も勢ぞろいで、それぞれに見どころを配している。
東野英次郎と加藤武のクレージー振り、左幸子、市原悦子のしたたかさも楽しい。
左卜全の老船長、山茶花究と乙羽信子夫婦の語るエピソードが切ない。
監督/川島雄三、脚本/新藤兼人のコンビは同年に傑作『しとやかな獣』も生み出している。
観終わってからは、もはや失われた美しい風景への惜別といなくなってしまった住民たちに対しての喪失感が大きく心に響いた。
S37('62)/東京映画/カラー/シネスコ/1時間41分
■監督:川島雄三■原作:山本周五郎■脚本:新藤兼人■撮影:岡崎宏三■音楽:池野成■美術:小島基司
■出演:森繁久彌、東野英治郎、左幸子、フランキー堺、山茶花究、乙羽信子、左卜全、桂小金治、市原悦子、加藤武
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