『戦火の馬』新宿ピカデリー
どこを切ってもスピルバーグ印の映画だった。
冒頭の仔馬の誕生シーンは、黒澤明が助監督をしていた山本嘉次郎監督の『馬』にもあったが、
この映画の少年の馬に対する深い愛情の想いは『馬』の高峰秀子の想いでもある。
黒澤明が生きていたら、この映画をどう観ただろうか。
だが、その『馬』で描かれていなかった戦場の馬の物語がこの作品であった。
後半のまさしく戦火の馬が戦場を疾走するシーンはスピルパークならではの見事な力技であった!
人間と馬との関係は、犬や猫以上に意思が通じる間柄である。
時として人間の心を見抜くのだ。
数奇な運命を見てきた馬の眼差しがたびたびクローズアップされる。
人間と馬はいつも映画に描かれてきた。
また戦争を描くところはスピルパークの得意とするところだが、映画として最もエモーショナル描写が可能だからだ。
ジョン・フォード、デビット・リーン、ウィリアム・ワイラー、スタンリー・キューブリック、黒澤明等へのリスペクトがあり、
本質的なところでスピルバーグの過去の映画遺産に対する映画愛に満ちた演出を感じた。