『雷魚』神保町シアター
映像の風景にインパクトのある映画であった。茨城県潮来周辺の水郷地帯の寒々としたローカル風景が登場人物の心象風景でもある。
脊椎版ヘルニアを患い生きる意志を失った女(佐倉萌)が、かつて愛した高校の教師を殺し自分も死のうと思い、旅に出る。しかし果たせぬまま偶然テレクラで知り合った男とセックスをし、そして殺す。彼女と殺された男の乗った車を目撃したガソリンスタンドのさえない男(伊藤猛)は、かつて不倫相手に自宅を放火され子どもを焼死させられた過去を持つ。男は女に接近する・・・
これは実際にあった「札幌テレクラ殺人事件」と「日野OL殺人事件」をモチーフに、ピンク映画の四天王と言われた瀬々敬久監督が一般映画に進出した頃の初期作品。劇場では、いま注目の瀬々監督作品ということで満席だった。
タイトルの雷魚は、漁としてかかっても売れない魚として打ち捨てられる。そんな無残なシーンが幾度となく出てくる。ガソリンスタンドやモーテルの風景などもアメリカンハードーボイルドを感じさせる荒涼感があり、スタイリッシュな映像である。そういえばモーテルの風呂場での殺人シーンが素晴らしいのだが、これはデビット・クローネンバークの『イースタン・プロミス』よりも前の作品なのだなぁ。
終了後、出演者の佐倉萌と伊藤猛、当時助監督の坂本礼のトークショーがあった。
≪トークショーでの証言≫
・この作品は制作費600万、6日間で撮られた。(ピンク映画の制作費は300万が相場)
・瀬々監督は、当時カルマや業ということにこだわっていた。(京都大学哲学科出身)
・また中上健司が好きで柳町光男監督の影響も大きいとのこと。(「火まつり」「さらば愛しき大地」)
・ロケハンにこだわる監督は、NHKドキュメンタリー番組で見た映像からこのロケ地を探した。
・精神薄弱児ぽい女を演じる女性は役者ではなく実はアートで活躍している人。
・当時、日活で一般映画「KOKKURIこっくりさん」を撮り、その後にこの作品が作られた。佐倉萌は前作のオーディションには洩れたが本作で起用された主演デビュー作となった。
・最初は、ユーロスペースで「黒い下着の女 雷魚」というタイトルで一般公開され、その後ピンク系劇場で公開された。
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