Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

『キクとイサム』銀座シネパトス

今井正の代表作をようやく観た。
当時はおろか今でさえためらうような題材だ。
戦後東北の田舎で御婆ちゃんと暮らす黒人の混血児兄弟を描いた作品だが、差別や偏見は容赦なく描かれる。
観ている自分でさえ、あの二人の容貌で日本で暮らしていくのは絶望的と思ってしまう。
キクの高橋エミ子とイサムの奥の山ジョージをキャスティングした今井正監督は冷徹だと思った。
映画の半ばでもイサムは米国の養子としてもらわれ、その後の消息は描かれない。
米国でさえ黒人は差別されていることもきちんと描かれている。
とことんリアルに描いた脚本は水木洋子
祖母と兄弟の生活を心配する隣の夫婦たちの関係は、村社会だからこそまだ救いがある。
三井弘次の雑貨露天商のおじさんや見世物小屋多々良純滝沢修宮口精二、東野英次郎などちょっとした登場も楽しい。
田中邦衛もちらっと出てたし、三國連太郎は新聞記者の役を計算ずくでふてぶてしく演じる。
なんといっても、そして皺くちゃのばあちゃんを演じた北林谷栄が素晴らしい。
女優という次元を超えて存在している。
どこにも行くところなどない、ここの土地で生きることを決意したキクと婆ちゃんの後ろ姿を観客は見守るしかない。
社会派今井正監督の冷徹なリアリストの本領発揮した作品だった。

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