Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

『満員電車』神保町シアター 

市川崑の才気が溢れている作品である。
オープニングは、明治、大正、昭和初期の最高学府の卒業式が描かれ、現在(1957年)となると会場の大講堂はなぜか火事となっており、
土砂降りの雨の中で大勢の卒業生が並ぶ中、学長がはなむけの言葉をとうとうと訓示る。
主人公の川口浩は、この一流大学を卒業して、就職難のなか有望な企業「らくだビール」に就職する。
就職をきっかけに三人の恋人ともサッサと別れる川口浩はドライな若者である。
人でごった返す新宿の雑踏やサイレンの鳴り響くビール工場など常に騒音にあふれている。
大量消費時代の予兆と就職難が皮肉描かれているが、コメディというよりはかなり社会風刺的意図が強い。
サラリーマン映画ともいえるが、東宝映画のような明るさは全くない。
川口浩の父母に笠智衆杉村春子という(今見れば)豪華さかだが、夫婦でお互いに発狂していると告白する不気味さ。
船越英二と川崎敬三も登場人物としてはなんとも奇っ怪な人物であっけなく途中退場する。
神経痛になった川口浩は、産業医に治療として変な注射をされ髪の毛が真っ白になってしまう。
すべてが狂っている。
カリカチュアされた展開と騒音の使い方が前衛的でこちらまで精神がおかしくなりそうだ。
なにか別の惑星の出来事のように思える。
そういえばこの感覚はデヴィッド・リンチの『イレイザー・ヘッド』か!
高度経済成長に入る前の日本でこんな感覚の鋭い映画を作った市川崑に感服する。
助監督には増村保造がクレジットされている。
ラストは小学校の入学式という意味は何か?
ここに映し出される子どもの表情はまさに昭和の子どもであった。

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