Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

『J・エドガー』Tohoシネマズ府中

FBI長官のジョン・エドガー・フーバーを描いたクリント・イーストウッド監督の最新作である。
アメリカ連邦捜査局を創設し初代長官に収まり、アメリカ大統領8代に渡り仕え、77歳で死ぬまで現役だったフーバー。
秘密のファイルを持っていたから大統領さえアンタッチャブルと云われた有名な人物である。
ブルドックに似た風貌のフーバーをレオナルド・ディカプリオが扮し、晩年の老獪な老人としても演じる。
ディカプリオはマーティン・スコセッシ監督の『アビエイター』でもハワード・ヒューズという伝説的人物を演じたが、
最近は何かとり憑かれた役を好み一流の監督と組むのが彼のステイタスのようだ。
今回はアカデミー主演男優賞候補と言われたが、結果としてはノミネートされなかった。
作品としては回想が多く時代を読むのが難であると思ったが、つかみどころのない権力者で老獪な老人はアカデミー委員にとって好まざる人物だったのではないだろうか。
そういえばアメリカの新聞王ハーストを描いたオーソン・ウエルズの「市民ケーン」と類似するところもあり。
しかもディカブリオはオーソン・ウエルズ扮するケーンとも風貌が似ている!
フーバーは自分の主義(正義)のために権力を行使するが、敵ばかりのなかで唯一心を許すのが三人の人物。
それは母親(ジュディ・ディンチ)と生涯の秘書ヘレン・ガンディ(ナオミ・ワッツ)、そしてFBI副長官クライド・トルソン(アーミー・ハマー)だ。
この人物の描き方がC・イーストウッド監督の職人技のうまさ!
フーバーを溺愛する母、フーバーが一目ぼれで求婚をするが断わり生涯フーバーに尽くす秘書ミス・ガンディ、フーバーの行きすぎを心配するホモ的関係のトルソン、
それぞれの関係性に含みがあり、後のイーストウッド作品論で語られるであろう。
アメリカの重大事件とFBIの発展史がフィードバックしつつ描かれるが、チャールズ・リンドパークの子息誘拐事件が重要なポイントとして描かれる。
前作の『チェンジリング』を彷彿とさせる奇怪さとミステリアスさで子どもの誘拐に対するこだわりがある。
(これは『ダーティー・ハリー』でも描かれていた)
9.11以降のアメリカの正義とはなにかという問いかけにもなっている作品でもある。
アメリカの正義の影の部分でもあり、フーバー自身が好人物でもないことで万人向けの作品とは言えないが、細部に豊かな映像表現があり見ごたえのある作品である。
フーバーとトルソンの老境の描かれ方は81歳のムービーマスターだからこその創れる映画である。
イーストウッドはいつまでも不死身なのか?

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