Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

『監督失格』Tohoシネマズ六本木

AV監督である平野勝之監督は、ぴあフィルムフェスティバルに3年連続入賞している根っからの自主映画の映像青年であった。
林由美香は亡くなってから有名になったAV女優である。(自分が知った範囲では)
AV作品で極私的な関係を描いた作品があるとは知らなかった。
映像はとことんすべてをさらけ出すというハード機器だから、アダルトビデオとの関係は、
監督と女優が二人がとことんくっつき合うのはあり得るなと思った。
ただのカップルのプライベートビデオを見せられたら、客は怒るだけだからそこが作家性の違いだ。
最初に林由美香平野勝之監督の北海道自転車旅行のAV作品「由美香」が延々と再編集されて見せられる。
ここに二人の関係が描かれている。
この映画は、平野監督の思いが時々字幕入りで挿入される。
ドキュメンタリー映画であり、プライベート映画でもある。
そこに映像人間の性(さが)が、自分と女優・林由美香の関係を撮っている中で衝撃の事態が訪れる。
この映像がなければ、この作品は成立しなかったであろう。
観終わって冷静に考えると、自主映画監督として生涯に一本の神の采配のような映画だ。
すべてが偶然のようで必然に思える。
撮り続けた膨大な映像が削られてつながって映画として成立させた。
お母さんが人間は記憶から消えることで二度死ぬと言ったが永遠となった。
このお母さんの存在は、強烈に印象に残る。
登場したときは、その風貌からお父さんが登場したかと思った。
親として思春期の娘の面倒をみてあげられなかった自責の念が画面から伝わる。
親子関係を修復しかけたときに、娘の死を目の当たりにして、どのように生きようか。
そして息子でもなく、娘の夫でもない赤の他人の平野監督のなんともいえない存在によって、
立ち直っていくところがこの作品の感動するところ。
林由美香も北海道旅行のときより、亡くなる直前の映像の方が成熟した女性を思わせる。
ひとりの女性の弔いの映画であった。

女優 林由美香 (映画秘宝COLLECTION (35))

女優 林由美香 (映画秘宝COLLECTION (35))

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