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「春の雪」 パルコ調布キネマ

映画の冒頭シーンに幼少時代の主人公の聡子と清顕のカルタとりがあり、松枝家をよく思わない聡子の父の企みが描かれており、この映画の道行が象徴されている。
この企みが思いもかけぬ方向に進む。宮家に嫁ぐことになったのに、聡子と清顕が離れられない仲になり、子どもまで身もごる。当然許されない愛だからこそ、燃えてくる。清顕のせりふにも「これが許された恋ならば、こんなに大胆になれただろうか・・・」とある。
三島由紀夫の小説で、輪廻転生というテーマもあるのだが、純愛というよりは禁断の恋。モラルやタブーの薄らいだ現代にいまさらという感はあるのだが。
妻夫木聡の次第に思いつめて行く青年は良いのだが、竹内結子は映画とは関係ないが実際おめでたで梨園の妻の座を射止めた現実をみると興ざめ。二人が肉体の結びつきで離れがたくなる艶ぽさが全く感じられない。
撮影、照明、美術が素晴らしいが、総力を発揮させた行定勲監督の力量はたいしたものだと評価する。日本映画でも若手でもこんな奥行きのある作品を撮れる監督が現れるようになったのだ。さり気ないが春の雪や蝶の舞うシーンなどのCG技術の融合も見事。
春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)