Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

「元禄忠臣蔵」(前編・後編) シネスイッチ銀座

松竹110周年祭として今日から松竹の選りすぐりの名作が上映される。―日本の美がここにある―とチラシに謳っているが、たしかにそこに魅かれる。
元禄忠臣蔵」は、見逃した溝口健二監督作品だったので、この機会に観に行った。
記録によると1941年12月に前編公開、翌年2月に後編公開。まさに太平洋戦争突入の時に公開された作品だ。建築監督・新藤兼人の名が記されている。それ以外の人は、ほとんど物故者かほとんどよく知らない人たちだ。大石内蔵助河原崎長十郎山中貞雄作品「河内山宗俊」「人情紙風船」で知られた俳優であるが、前進座や歌舞伎関係の俳優が多い。
タイトルに陸軍局なんとかの文字が出てくるが、映画のセットが豪華絢爛たる造りでとても戦時体制のなかで製作されたとは思えない。武家の作法、衣装なども隅々まできちんと時代考証されていた時代だと感心する。
前編は、いきなり松の廊下での刃傷沙汰から始まり、浅野内匠頭切腹、赤穂城明渡しまで、せりふが少し聞き辛く内容もやや単調に感じた。
後編は、討ち入りまでの大石内蔵助の苦悩と決心から、討ち入りの場面はなく、一気に討ち入り後に転じる。四十七士の処遇から切腹までがエピソードとして長い。武士の本懐として主君に尽くし、見事に潔く殉死していく志士たちを見送り、晴れ晴れとして切腹に向かう大石内蔵助の姿で終わる。
大セットにクレーン移動による見事な撮影に目をみはる。溝口健二監督の演出力とはいえ、国家が勢力をあげて作った国策映画に思えた。主君に尽くして、殉死することの強烈さが当時この作品を観ている国民にどう思えたのだろうか。
追記として、瑶泉院役の三浦光子の姫としての立居振舞の美しさ、後編の後半に登場する高峰三枝子の美しさを賞賛する。