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「島清、世に敗れたり」紀伊国屋サザンシアター

地人会第99回公演 作/松田章一 演出/高瀬久男
全く知らなかったのだが、石川県出身島田清次郎という作家の破滅的な生き方とタイトルに魅かれて観劇する。大変面白かった。
明治が終わり、大正デモクラシーと言われる時代の変わり目に、貧困のなかから這い上がり、「地上」という著書が大衆の支持をうけベストセラーとなり頂点を極め、大金を得て豪勢な生活と洋行など果すが、女性とのスキャンダルで失墜し、精神病院にて31歳で死す。
時代の寵児というのだろうが、島田清次郎は這い上がるときには、己の才能を信じ、自分は天才と過信し、時代の波に乗る。このような上昇志向の人間は、現代でも見受けられる今のITバブルの登場人物にも似ているか? しかし、波は高く呑み込まれる。それはまもなくやってくる昭和の時代、軍靴の足音とともに。
主人公の島田清次郎を演じた上杉祥三は破天荒な人物として動き回り力演。才気におぼれ、時に狡猾であったり、子どものようになったり、人を人とも思わぬ不遜な態度でありながら、孤独におびえたり、多面的にこの破滅的生き方を演ずる。
また作家の徳田秋声を演じた有川博も良い。文壇の大御所として同郷人として清次郎を救おうとするのだが、時に父親のようであり、また文学者として人間の孤独の本心を清次郎に諭そうとする。
燐光群鴨川てんしは、最近気になる役者なのだが、ここでも編集者と精神病院の入院患者をやって脇を固めていた。