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ヒトラー〜最期の12日間〜 渋谷・シネマライズ

重い作品なので敬遠していたがついに観た。
戦後60年の年、同じ敗戦国としてドイツはどのような終戦を迎えたか?
日本も東京大空襲など首都の壊滅状況であったが、ドイツはベルリン陥落という市街戦のなかナチスドイツは破局を迎える。
そしてこの戦争の指導者ヒトラーがどのような指導者であったか、ドイツ人の立場でどのように描くかが賛否の話題を引き起こした問題作である。
日本では終戦時の様子を描いた岡本喜八監督の重厚な作品「日本の一番長い日」を思い起こすが、「プライド〜運命の瞬間〜」という東条英機をあきらかに感傷的に描いた作品があった。
ヒトラーは20世紀の最大の悪役であることであるから、描き方によっては問題を起こすことは必然だった。
ましてや、追い詰められて自殺するまでの数日間だから、腹心たちの裏切りや秘書たちに対する思いやり、愛するシェパード犬など描かれると普通の人間で野望が果せなかった悲運の権力者とも捉えかねない。
だが、地下壕にこもり、市民が犠牲になるなど当たり前のように言い、弱い者は滅び、強い者だけが残るとわめく、根拠もないのに反撃ができる言い放つ姿や酒浸りの側近たちの醜態なども描く。ナチスに心酔し、ナチス崩壊後のドイツ未来はないと平然と子どもたちを毒殺し自害するゲッペルス夫妻の姿も強烈だ。
戦勝国がすべて正しいという論理に対する、敗戦の感傷、敗者の美学ともいえる壮大な破滅行為に危険な香りがないこともないが、一市民の子どもである軍国少年が、市街戦のなかで、同じ国民に両親を殺されるところを目撃し、すべてを失っても生き延びていくところなど、随所に戦争否定のバランスを取っている。
あえてホロコーストなどの最大の犯罪行為を描かなかったのも、秘書の目からみて、当時は知らなかったことだという視点からだ。最後に2002年の本人自身が出てきて、「知らなかったことはいけないことだった。自分が秘書になったときに同い年の人が収容所で殺された。」と語ることで締めくくっている。
映画の間中、聞こえてくる砲撃音は映画が終わっても頭に残る。