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愛についてのキンゼイ・レポート シネスイッチ銀座

多様な価値観を認める良い意味でのアメリカの国民性を感じさせる映画だ。
9.11テロ以降のブッシュ政権下保守派挙国一致体制に対するハリウッド・リベラル派のアンチテーゼでもある。
実際には、ブッシュ政権の強力な支持母体であるキリスト教保守派からの猛攻撃があり、国内ではヒットしなかったようだ。
しかし、アメリカは極端だ。道徳を重んじてガチガチの法律で押さえ込むかと思えば、60年代はフリーセックスの先進国とも見られた。
1950年代に聞き取り調査でセックス・レポートを作り上げたアルフレッド・キンゼイ教授を主人公とした作品であるが、ありきたりの言い方であるが、こういった先人たちのパイオニア精神を受け容れる了見がアメリカの良識を支えてきた。
キンゼイ教授自身はかなり変わっている。父親が超保守的な宗教家なので、それに反発したことが大きく人生に影響を与える。それが教授自身も寛容に進み過ぎていて、家族のなかで息子が「普通の家庭ではない!」と反発するのもよく判る。夫婦でスワッピングの実験をするなど過激に思える。リーアム・ニーソンは、良い人のイメージが強いが、まじめに人間の秘めたる性欲を調査することに珍奇な笑いをもたらす。
結局、キンゼイ教授の晩年は不遇な生涯をおくることになるが、開いた扉は大きかった。反動につぶされそうになり自分はなにも出来なかったと嘆く教授に、女性患者が昔より今がはるかに良くなったと語る言葉にこの作品の製作者の思いが込められている。
科学はデータにより人間の本能を分析し、タブーや迷信を打ち負かす力になると信じて突き進んでいった教授が、愛という科学変化こそ人間にとって一番大切なものだと発見する。
愛についてのキンゼイ・レポート」という邦題も良い。