Like a bird, like a cat, like a fish?

映画・落語・写真・ダイビングを中心としたお気楽人生ブログです。

美しき日本人

solaris582005-05-14

高井戸京王にて黒木和雄監督の父と暮せばを観る。
宮沢りえがはかなげで美しい。
原爆投下の広島で生き延びたことを負目に感じ幸せになってはいけないと頑なに思っている。
すでに被爆して亡くなった原田芳雄の父親が、娘の日常生活に違和感なく現れる。
父親は、娘の幸せを祈り、応援団として励ます。
生者が生きていくことを申し訳なく思うのに対し、死者は生者に対して自分の分以上に幸せになって生きてもらいたい。
この2つの倫理観が、戦争の惨さ、平和の尊さを訴えて、心に響く。
先ごろ起こったJR西日本福知山線事故で奇跡的に生還した女性がまったく同じような思いを持っているニュースが脳裏に重なった。
井上ひさしの戯曲は、初演時に観たが、さすがに映画なので原爆の閃光や当時の風景が挿入されていて原爆の悲惨さが強く描かれている。その分戯曲以上に映画は完成度が高いように思った。(最近の日本映画のCG合成の水準は高くなった)
舞台では登場人物は二人だけだが、映画では娘の幸せにつながる青年役で浅野忠信が数シーン登場する。
原爆を世に伝える第3者だという井上ひさしの解説になるほどと思った。
親子の会話、その広島弁の会話の美しさにも魅かれた。このような美しい会話をする親子関係は、もう現代の日本では見られないのではないか。
親子の住む家は、広島ドームのなかという衝撃のラストシーンも素晴らしい。
美術監督木村威夫さんの仕事も見事、焼け爛れた造型物を作り出していった日活芸術学院の学生たちもこの作品に参加できたことは誇りに思って良い。
黒木和雄監督の前作「美しい夏キリシマ」も観たいのだか、なかなか劇場にかからないのが残念だ。

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